"Bright Codes" was written for my good friend, Jacob Greenberg.
We decided, rather than writing a 12 minute piano work, I should write four miniatures. I wrote these miniatures with some gaps: I was writing something else, then I came back to write one more miniature, then I went off to write something else, and so on. I did this so Jake could then premiere each miniature as I completed it.
I had no idea what sort of miniatures they would be while writing. In the end, it became very odd music – to me, something I have never thought I would write. I do not know where they come from…
Maybe, it is Jake’s fault. He has given me a special inspiration, for me to go somewhere within myself I have not visited before.
Dai Fujikura (edited by Bridgid Bergin)
「bright codes」は昔からの友人、ピアニストのジェイコブ・グリーンバーグからの依頼で書いた。1曲12分くらいものを書くのも良いけれど、3分から4分の短い楽章を4つ、一つずつ書いていき、できたものから世界初演する、という方法はどうだろうか、と提案してみた。その4つの楽章も一気に書くのではなく、大きな他の作品を書いている間にちょこちょこ書いてみる、といやり方で作っていった。この作品はどの楽章をどの順番で、どれを弾いても良い、という音楽。これはこの曲に限らずなのだが、友人、しかも仲の良い古い友人に音楽を書くときは、何故か自分でも変な曲だなあ、と思う作品になることが多い。どうしてなんだろうか。
今回のこの曲も一つ目に作ったのがcode A というもの。だいたい僕は一つのフレーズを繰り返す音楽が大嫌いだ。それなのに、この曲は延々と一つのフレーズを繰り返す。でも何故か途中から壊れた時計のように、一定間隔だったリズムが大幅に狂いだす。
他の楽章も、いつもはこんな音楽考えないよなあと思う感じの音楽が出てきた。どうしてこうなっちゃうんだろうか?ジェイコブのせいかもな、と勝手に依頼してくれた友人のせいにする。たまたま書いたこれらの楽章がジェイコブがすごく喜ぶものになったのは、嬉しい偶然。と言っても、実は幻の楽章が一つある。
code C という楽章だ。最初に書いたのはかなり超絶技巧な楽章だった。楽譜を送った後、ジェイコブから何も反応がない。この期間にたまたま僕はニューヨークに行くことがあり、ジェイコブの家にも遊びに行くこともあった。ピアノの譜面台には、かなり指遣いから手書きのメモからが入ったこのスコアがあった。ある日、「この曲はどうしても僕には向いてない、新しい楽章を書いてくれないか?」と大変丁寧に、言いにくそうに言ってきた。そんな事を言われたのも初めてだけど、そのようなリクエストで新たに曲を書いたのも初めて。それだけ僕はジェイコブを良い友人だと思っているんだろうな。
その「向いてない」と言われた作品を他のピアニストに見せてみても、「これはちょっと無理なんじゃない?技術的なことというより、全くパターンと言うものがない。その上超高速テンポ。頭脳的に不可能なんじゃないかなあ、一人で弾くには。。。」と言われた。なので、素晴らしいピアニスト2人がそういうのなら、本当に一人のピアニストが弾くには向いてないのかもしれない。そして、その楽章はのちに別の作品として生まれ変わった。
話を戻すと、新しい楽章を書いて欲しい、と言われて、スイスのオペラ劇場で自分の2作目のオペラ「黄金虫」のリハーサル中に暇だったので、練習室に忍び込んで、新しく楽章を書いてみた。
二回目の試みのcode C。これまた僕にとっては不思議な、ピアノの鍵盤上、両手がうにうにするような(?)作品になった。こちらはジェイコブは大喜びし、これでやっとbright codeは完成した。
藤倉大