この作品は、日本フィルからの委嘱で制作しました。この日本フィルのコンサートシリーズのプロデューサーである落合陽一さんとは、2020年に僕が書いた「Longing from afar」という作品から数回コラボしています。
今回は沖縄の伝統音楽を取り入れた作品をリクエストされました。中学生の頃から、僕は沖縄の音楽を聴いており、ポップスからオーケストラのアレンジメントまで、さまざまなジャンルの音楽を聴いてきました。
落合さんとのミーティングでは、「Longing from afarみたいな感じの作品だったら良いなあ」と言っていたのを思い出しました。Longing from afar はパンデミックが始まった直後に僕が書いた作品です。どんな作品か、というと、リモート演奏でも演奏が可能、というのは、音がズレても良い、どちらかというと、音がズレるのを歓迎する、という感じの作品です。
音列があり、時々メロディも出てくる。でもどの楽器でも演奏しても良いし、ふんわりとしたルールはあるけれど、自由度も高い作品。僕のいつものコンサートのための作品は、細かいところも全部書かれているのですが、それの反対の精神でチャレンジした作品でした。
今回の「Open Leaves」は、その延長線上にあり、さらに沖縄の要素も取り入れた挑戦となります。
沖縄の音楽については、前述のように何度も聴いたことはありますが、専門的に学んだことはありませんでした。この機会に三線奏者の新垣俊道さんから多くを学びました。
僕が最初から目指したものは、沖縄の音楽要素を絶対に邪魔しない、ということ。沖縄の音楽が沖縄の楽器によって演奏されている時に、その沖縄の楽器の奏者たちに、「オーケストラが入るので、こうやって演奏してください」とか「こう言うふうに演奏しないでくだい」と一切言わない、というのが僕の自分に課したルールでした。沖縄の伝統音楽の奏者が、いつも演奏するように演奏している、そこにオーケストラが包むように入ってきて、音楽的に合う。オーケストラが調和しつつ新たな次元を生み出すような音楽を目指しました。
基にした沖縄の音楽は「揚作田節」です。これは「ふた葉が松の木になる」という意味があるそうです。そこで、作品のタイトルを「オープンリーヴス」としました。
藤倉大