The music is drawn from the score of my opera.
"Umi" means "sea" in Japanese.
Sometimes the strings suggests the movement of sea-waves and the terrifying and unknown feeling when you are facing the sea.
In the end the sound of this orchestra work has very different atmosphere from the opera, and I think it expresses totally different, and independent sound world.
Dai Fujikura
《 Umi(海)》
この作品はもともと僕の1作目のオペラを基に、作曲し直したものです。
出来上がったものはそのオペラとは違った印象を持つ、また別の音楽世界かな、と思います。
やはり、オペラの素材が基なので、この作品は大変リリカルなものです。
もともと僕はメロディが書きたい、と思って子供の頃から作曲しているので、僕の中でははっきりとした旋律が常に流れています。
時にはメロディとはっきり分からないかもしれないけれど。
それを聴く人が、探偵のように耳をすませ、それらを見つけて頭の中で繋げていく。
そうすることによって、知らない間に全く知らない世界に入り込んでいた、という空間を僕の書く音で作れたらな、と僕は思います。
今回のこの作品はそういう意味ではとってもわかりやすく、メロディが始終出てきます。
そのメロディの間を、弦のトレモロがこちらに迫ってきたり、後ずさりしたりします。
弦のトレモロは海の波を表し、海の波は波でも、ちょっと普通の波ではない感じ。
幻想の中の海、波。
心の中からのざわめきを表したかのような波がだんだんと迫ってくる。
その間をうねり歩くように、複数のメロディが楽器によって演奏されます。
一応2楽章には分かれているものの、一つのオーケストラの曲。
それなのにいろんな状況が、ぱ、ぱっと展開して進んでいきます。
流れ星のような弦のオーケストラのスタッカートのグリッサンドがあったり、おどけたようなコントラバスとチェロのピッチカートで、よろよろとした部分があったりもします。
そのすぐ後に、室内音楽のようなパーソナルな音楽が鳴ったかと思ったら、最後に向けて、盛り上がる中、そこを朗々とチェロとホルンの旋律がうねり歩きます。
僕は昔から海を眺めるのが好きです。
それはやはり、いつ海を見ても、同じようには見えない、海にはいろんな表情があるからです。
まるで自分の心の中を映し出しているような。
宇宙から見た地球の海を見ると必ず涙が流れる、と言っている宇宙飛行士のインタビューを読んだことがあります。
人間は、海を見ると必ず感動するようにデザインされているからだ、と。
藤倉大