Dolphins

"Dolphins" for 2 violas

The picture I had in my mind when I wrote this work is of two dolphins who
swim in circles around each other; they swim elegantly, like a pair of
synchronized swimmers, creating a special symmetry. It reminds me of
identical twins talking, finishing each other's sentences. "Dolphins" is
very lyrical work, and the lines played by both the violists are constantly
moving together almost in concentric helixes. Lately I have been asked to
write for viola a lot: the solo viola work "flux",  "prism spectra" for
viola and electronics, and now the viola duo, "dolphins". One day I would
love to write a concerto for viola.

Dai Fujikura (edited by Miranda Jackson)

ここ数年、奇しくもヴィオラの作品を書く機会を多くいただいています。今までにソロのヴィオラ作品「flux」,ヴィオラとエレクトロニクスの「prism spectra」を、それぞれ違うヴィオラ奏者に依頼されて作曲しました。ヴィオラはとても不思議な楽器で、ある意味「中間的な存在」なので作曲するのが難しいのです。

僕はどちらかというと演奏家にインスピレーションを受けて書く作曲家ですので、今回、今井信子さんとキム・カシュカシアンさんのために曲を書くのはとってもエキサイティングな事でした。僕が中学生の頃、高校からイギリスへの留学が決まっていたので、当時住んでいたマンションの下の階の英語の先生に習いに行っていましたが、その人がなんと現代音楽の大ファンだったのです。当時僕は全然現代音楽を知らなかったのですが、「コレ聞くと良いよ」と貸してもらったCDが小澤征爾さん指揮、今井信子さんがヴィオラ・ソロをされた武満徹さんのヴィオラ・コンチェルト「a string around autumn」だったのです。その時から現代音楽を聞き始めたので、言ってみればそれが現代音楽に触れた初めての作品でした。

それから後、大学生の頃、僕はほとんど現代音楽のみしか聞かず「全ての古典音楽は博物館に眠っている音楽なんだ!」というほど夢中になって現代音楽を聞きあさっていて、キム・カシュカシアンさんの演奏する美しいベリオの録音、後に僕の「音楽上の父親」というほどにお世話になるペーター・エトヴェシュさんのヴィオラ・コンチェルトのCDなどをよく聞いていました。

ですから今回、そんなお二人にデュオが書けるのは夢のようなことでした。

今回の「Dolphins」は、「2匹のイルカが一緒に絡み合って泳いでいる」というようなはっきりとしたイメージではなく、2つの「なにか」がエレガントに、一緒にくるくると回りながら泳いでいる、あるいは空を飛んでいる、会話だとすれば2人が同じ一つの文章を、まるで「双子が会話するように」作り合っている、そのように「2つのヴィオラが一つになる」という感じの作品です。とってもリリカルな作品で、この作品を書き始める前から、早くこのヴィオラ・デュオの作品を書きたいと思っていました。

いつかヴィオラ協奏曲も書いてみたいなと思います。

藤倉大



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