藤倉大さんとの出会いは2009年新作《Atom》の初演の演奏会でした。
その年は特に日本で藤倉さんの新作初演が多く、《Secret forest》や《as I am》を立て続けに聴いて、
藤倉さんの音楽は言葉にはできないような秘め事を持つ音楽だと思ったのでした。
「いつか藤倉さんと音楽を共にしたい!」そんな目標を抱きながら少し月日が流れて、
2011年に《Toccar y Luchar》が日本初演されたとき、藤倉さんの作風は少し変化したように思えました。
一直線に闇の中から明るい方に突破していくエネルギーを持つ作品へと変わった気がしました。
きっと愛娘Minaちゃんの誕生が大きかったのではと僕は想像しました。
2015年秋、突然藤倉さんがメールをくれました。「《5人のソリストとオーケストラのためのMina》の
ダルシマーのパートをヴィブラフォンに置き換える事は可能だろうか?」僕は少し音を出し、
パート譜をじっと見つめていると、このダルシマーパートそのものにもの凄い魅力を覚えました。
「藤倉さん、これはヴィブラフォンのソロ作品になるのではないでしょうか。」と提案してみると、
タイミングよく藤倉さんは休暇中で、その数日間で一気に《minimina》を書き上げてくれたのです。
《Mina》の一部から生まれた《minimina》は、細胞の一つを取り出してあげたような、可愛らしい小品です。
けれども、僕はかえってその細胞を直視した事で、藤倉さんの音楽の魅力を再発見した気がしました。
作品は様々なリズムとハーモニーを煌めかせながら、あるひとつの大きな方向に向かって躍動します。
こんな素敵な音楽を演奏出来る事を僕はとても幸せに思います、藤倉さんに心から感謝!!
そして僕があのとき感じた藤倉さんの作品の秘められた内なる叫びは、時を重ねてさらに濃密に凝結していると密かに感じているのです。
會田瑞樹
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