When my wife Milena was pregnant with our daughter Mina I remember she was
telling me one of her many first feelings was of butterflies in her stomach,
which is a good early sign of pregnancy.
When starting to write this work I had this and an image of macro photographs of
seeds which I had seen in a science magazine in my mind.
Therefore this piece features extensive use of fluttertongue for flutes and
clarinets, which are like closeup photos of flower seeds. The brass -
usually much louder instruments than the woodwinds - come in very softly
with various mutes on, as if they are protecting the fluttertongued
woodwinds.
As each woodwind fragment gets larger and larger, they seem stickier and
softer and start to form a lyrical texture. Sometimes the brass play
sfortzandi which then makes this texture explode into small, hard surfaced
fragments. These float in the air and start changing form.
My intention is that one should be able to "see" and "taste" these sounds,
and feel the process of the textures changing.
Dai Fujikura (edited by Harry Ross)
my butterflies
僕の妻のミレナが、娘の「みな」を身ごもっていた時―それは僕にとってもミレ
ナにとっても全てが初めての世界に突入する第一歩だったのですが――、ミレナが初め
て体験する様々な感覚の一つが、おなかの中に蝶々が羽ばたいてる感じだ(それは妊娠初
期の良い兆候らしいです)、と言っていたのを思い出します。
この作品を書き始めた時(娘は無事生まれ、ちょうど5ヶ月くらいでしたでしょうか)、僕の
頭の中には、この感覚と科学の雑誌で見た、接写された種子のイメージがありました。
そこにはこの世界にないような不思議で、美しい写真が載っていました。
ですので、この作品はフルート・クラリネットのフラッター奏法――それはまるで花の
種のクローズアップ写真のようで、フワフワした感じの音色で、綿毛のような感じで
す――の多用に特徴があります。金管楽器(通常、木管楽器よりもずっとやかましいもの
ですが)はとても柔らかに、様々なミュートをつけて、入ってきます。それはまるで、
金管楽器がフラッター奏法をする木管楽器を外から守っているかのようです。
それぞれの木管楽器の断片が次第に大きくなるにつれ、それらは粘りを帯び、そして
柔らかくなるようで(お餅をひっぱったような感じに柔らかくのびる)、そして叙情的
なテクスチャー、メロディを形成し始めます。時々、金管楽器が、このテクスチャー
を小さく、表面の固い断片へ(急に凍りつき、それが金管のアタックにより割れて、そ
の断片が四方八方に飛び散ったような)と急変させるスフォルツァンドを奏でます。こ
れらが空気へ流れ、形を変え始めます。
僕はこの作品を聴いていて、これらのサウンドを「見る」、そして「味わう」ことが
でき、そしてテクスチャーの変化の過程を感じることができるはずだ、と思います。
藤倉大 |